14年で培った度量、尖っているように見えて誰にでも優しいのかもしれない『龍が如く7 光と闇の行方』
龍が如くシリーズ
言わずと知れた「実在する繁華街」を舞台として
重厚な物語と爽快なアクション、多様な遊びをテーマにしたセガゲームスが送る大作アクション。
11月13日からナンバリングタイトル最新作となる龍が如く7の体験版が配信されている。
龍が如く7の試みとして前作まではアクションであったジャンルをRPGに置き換えている。
おそらくこのジャンルの変更には新しい客層を取り込もうといった試み、マンネリ化しつつある同シリーズに新しい風を吹き込もうとするナンバリング作品が持つ悩みに対する一つの回答だろう。
今日は実際に体験版を遊んだ感想を振り返っていく。
14年かけて築き上げた度量
龍が如くシリーズ初のRPGということで期待と不安が混じったまま体験版の配信が始まった。
唐突なRPGへの路線変更、中には冷ややかな目で見ている人もいるかもしれない。
しかしそこはさすがのSEGAであった。待ちゆく人々と会話をすると某RPGで聞いたことのあるセリフの数々。
そしてイベント中に「ドラクエ」と言い放ってしまう。
パロディどころかここまでくるとオマージュだろう。
またこちらのセリフなど見ると明らかだが、ネタに全力疾走どころかジェット機で突入していく姿勢。
現代の美麗グラフィックでこの会話は正直ずるい。
龍が如くの新作を遊んでいたことを素直に忘れてしまう。
初代である『龍が如く』無印を遊んだっきりの人に最新作を触らせてあげたい。絶対に新作と信じてもらえる自信がない。
そしてハローワークに実際に赴くことになるのだが、ハローワークはただのイベント用装置で終わらなかった。
『ハローワークで転職ができる』
当たり前といえば当たり前だが現代を舞台にしたRPGでジョブチェンジシステムが導入されるとは思わないだろう。
(ジョブチェンジとはファイナルファンタジーなどに代表される職業を変えることでキャラクターのステータスが変わるシステム)
さすがに膝を打った瞬間であった。
しかし置いてある職業がこれまた良い意味でひどい笑
世界観を壊さないためにジョブチェンジシステムの観念そのものをぶち壊していくスタイル。
このあたりがさすがのSEGAである。
暴れるときは徹底的に暴れる。
そしてRPGといえば装備の変更。
ええ、その通りです。こちらもひどい。
地面に埋まったバットを武器にしたかと思えばアダルトショップで大きなマッサージ機を武器にしたりとやりたい放題でした。
龍が如くチームはどこに龍が如くらしさを見出しているのか非常にきになる。
『らしさ』を用いてユーザーを振り回す姿勢さすがである。
かと思えば振り回した先にはちゃんと過去作品を遊んでくれたユーザーに優しい着地点も用意されている。
このおじさん、過去作品を遊んだ人にはピンとくるかもしれない。
そう2で出てきた赤ちゃんプレイが好きな組長である。
このあたりは思わず懐かしんでしまった。
(おむつ姿のおっさんで懐かしませるあたりが嫌らしい、汚いさすがSEGA)
そしてイベント名を見てほしい。
安室奈美恵である。
変態的なキャッチーなおふざけイベントで引き付け
続いて懐かしいキャラクターを投入
終いには安室奈美恵の曲名で締める。
誰でもどこかで引っかかるような笑いの構成。
あまりにも醸成している。これが14年間で築いた度量であろう。
そしてその度量を全て笑いに全力投球。
龍が如くチームがまじめにインタビュー受けているシーンを見ると嘘にしか思えない。メインプロデューサーのあの強面は何なんだろう…。恐るべし。
ゲームとしてはどうなの?
RPGとしてシステムの部分であるがまだ体験版ということもあり全容まで見えないながらも非常に遊びやすいシステムであった。
1キャラクターごとのターン制になっているが、一人のキャラクターがダウンをとれば自然に仲間が追撃を行うなど爽快感を感じられるものは残っている。
また、行動を選択したのちに敵キャラクターとの対角線上に物があれば蹴り飛ばすなどのステージギミックも新しい。
(自転車が対角線においてあれば蹴り飛ばし周囲を巻き添えに)
いわゆるMPを消費しての技が周囲の敵を巻き込むなどする効果がある物もみられるが、自キャラクターの位置取りを任意に修正ができないので運要素が混じってしまうのはやや粗さを感じた。
一方で自動で戦闘を進めるシステムがあるなど、ストーリーだけを追いたい人や戦闘にそこまで興味のない人にとっても優しいシステムなど細やかな配慮は行き届いていた。
また技にも遊びが多く
ナイキのスニーカーのような技や唐突に昼寝をする技など真新しい。
上記のように遊びという点ではキャッチーであり、なおかつ誰しもがどこかで引っかかる丁寧なつくりをしている。
一方で大きなムーブメントを巻き起こすなら口コミをしてくれるコアゲーマーがどれだけ迎合していけるのかが話題を呼ぶ鍵になると思われる。
ただ、まだまだ体験版であるため1月まで時間はあるため今後のアップデートに期待をしたい。
劇場で見る楽しみに立ち返らせてくれる映画『ジョン・ウィックchapter3~パラベラム~』
『ジョンウィックchapter3~パラベラム~』
ようやく劇場鑑賞。
3の公開にあたって1作目と2作目を急いでネット配信で復習してからひと月も経ってしまった。
結果から言って劇場で見て大成功な作品であった。
私自身、最近は映画館で鑑賞することが億劫になっていた。
上映中に無駄話をする周囲の方、スマートフォンを操作し光を漏らす方、スタッフロールで目の前を平気で横断する方。
そうした致し方ない要素に目を瞑るストレスを持ってしまうくらいなら家でサブスクリプションサービスで映画を見るだけで良いと、劇場に足が遠のいていた。
だが本作品はそうした感情を全て弾丸の嵐とともに吹き飛ばしてくれた。
相変わらずの華麗なアクションの数々や凝った設定の世界観などは前作、前々作よりも更にパワーアップして帰ってきており、重たい話も前作より地続きであるため大きな矛盾を内包することもなく安心してみることができた。
銃撃戦の華麗さやストーリーについては多くの人が語られているためあえて割愛するが、『劇場で見る楽しみ』に立ち返らせてくれた要素としてラスト30分ほどにすべてが詰まっている。
ラスト30分は主人公であるジョンウィックがホテルで侵入してくる殺し屋部隊と防衛戦を繰り広げる。
ホテルは営業を止め、宿泊客はすべて締め出されてしまう。
劇中、せわしなく人が行きかっていたホテルが明かりも落とされ静寂に包まれる。
皮切りになるのはジョンの発砲、そこからは延々と銃声が響き渡り続ける。
弾丸はホテル内のいたるところに当たり音を鳴らす。「キンッ」と壁に反響する金属音かと思えば木製の仕切りに当たり「コンッコン」と耳を打ち付ける
劇場特有の立体的なサウンドが左右から休みなく鳴り響く。
小休止が挟まったかと思えば侵入者の防弾装備が高性能であるためジョンも武器を持ち換えて応戦する。
武器が変わることで音も体を打ち付ける重低音に変わる。
侵入部隊を退けたジョンと相対するは日本かぶれの殺し屋とその弟子達。
弟子二人組はジョンを翻弄、ジョンを代わる代わるガラスに打ち付ける。ガラスが飛び散る音が木霊する。
かと思えばナイフを振り回して襲い掛かってくる。空を切るナイフの音も耳に心地よく残る。
ジョンは二人をベルトを武器として用いて撃退。ベルトが空を切る音もさながら鞭のように鳴る。
辛くも二人を退けたジョンの前に最大の敵が立ちふさがる
「お前を殺すのはこの俺だぁ!!」
(最後のシリアスなシーンでこの日本語発音は正直ずるい)
日本刀を用いて相対する二人
(個人的に日本刀に一番映える格好はスーツだと思っている。『GANTZ』のホスト侍こと氷川や『ローグ・アサシン』のマフィアが物語っていることは歴史公証的にも明らか)
日本刀が空を切る音はもちろんだが、ガラスを切る音は不快な音ではなく快感すら覚える。
そしてジョンが相手の胸に日本刀を突き刺し、深く、深く入れ込み決着する。
音の波で30分あまり殴られ続ける、そしてその全てがただただ大きな音を出すだけではなく快感に寄せたつくりになっている。
家でこうした音響設備を作ることは並大抵の熱量では難しい。2000円という金を投資しても映画館で、劇場で映画を鑑賞することの価値に立ち返らせてくれる作品であった。
そして激しいアクションや音による圧力、かと思えば唐突に静寂をもたらすBGMの緩急は見る者に緊張を走らせる。
隣で見ている人の唾を飲む音すら聞こえそうなほど。
客を引き込む作品が周囲に気を散らす暇さえ与えてくれない。
上質な映画がもたらすのは観客の一体感であるかと錯覚するくらいには全員が注視していたのではないかと思う。
公開から既に日が経っているがまだ見ていない人は是非劇場で見てほしい。
ウーロン茶苦かったろ。苦くて当然と思ったか?
今週のお題「好きな漫画」
タイトルは大好きな漫画で主人公が放つセリフの一つなんですよね。
これどんな場面だと思います?
主人公が対戦相手と試合前に会食をした際に下剤盛っていることを告げるシーンなんです……
そう、この漫画の主人公はとんでもない男なのである…
そんな主人公が活躍する漫画は木多康昭先生が描く『喧嘩商売』((週刊ヤングマガジンにて時折連載中(作者が隙あらば休載するため)「最強の格闘技は何か?」をテーマに最強の座をかけて何でもありの異種格闘技戦が繰り広げられる。主人公は歴戦の格闘技者に類稀なる頭脳を用いて謀略を張り巡らしつつ闘いを仕掛ける… 現在はタイトルを変え第二部として『喧嘩稼業』が連載中)
この主人公、とにかくクレバーというより卑怯に片足を突っ込んでいる
今まで犯した悪行の数々はとても人の所業とは思えない
作中でも『悪魔の申し子』とか言われる始末
今までに犯した悪行の数々
- 喧嘩相手に柿の種を食わせ毒物と嘘を付き嘔吐させる
- 回転ドアで人の指を挟む
- 実の父を冤罪で警察に付き出す
- 対戦相手に毒を盛ったと嘘を付き嘔吐させる
- 修行という名目で広域暴力団を解体する
- 対戦相手に生き別れの母親を演じさせた詐欺師を送り付ける
- 対戦相手に毒針を指す
毒物が得意技みたいなキャラ紹介になったが他にもとにかく悪行の限りを尽くす。
そしてほとんど全て笑いながら行っている。悪である。
傍から見ると主人公が一番ヒールの立ち回りをしているが、この漫画のテーマは「何でもあり」が重要なコンセプトになっているため主人公はとにかく悪魔的な大立ち回りを繰り広げる
時には待ち伏せを仕掛け、時にはうそをつき、時には人をけしかける
だがこうした努力も全て格闘技のプロと戦うための戦略のひとつでありこの作品の大きな魅力の一つである
主人公はけっして特殊な超能力を持ち合わせているわけでもなく、その頭脳を巡らせて強敵と渡り合っていく。
だからこそ事前の準備を入念に行い、仕掛けた罠の数々に誘導していくことで有利な展開を作り出す。
その努力が結果に直結する様はある種、少年漫画のような清々しさすら感じられる。
また並行するギャグパートが尋常じゃなくおもしろい。
基本的に時事ネタを多用するスタイルであり、なおかつ踏み越えてならないラインを平気でまたいでくる。
実在の著名人に酷似した人物が登場することも多々ある。
(主人公の担任教師が未成年淫行で逮捕されるのだがモデルとなった人物は島袋武であったり、…)
興味を持った人は是非本誌で追ってみてほしい。
ざっくりとした紹介になってしまったが男であれば読むべきと言っても過言ではない漫画である。
熱量も笑いも一線級のおもしろさであり、ここまで矛盾なく両立している作品も稀有だろう。
『PSYCHO-PASS 3』のおかげでまたまた寝不足になってしまう話。そしてアマゾンプライムビデオ独占配信中なのです!
PSYCO-PASS 3が始まって、やはりというかなんというか期待通りというか期待を超えてくれるのが期待通りというか。
『PSYCO-PASS』
フジ系列の人気アニメシリーズ。
キャラクター原案、天野明(『家庭教師ヒットマンREBORN!』の作者)
サイコパス=色相(人間の心理状態)によって人のすべてが数値化された近未来で、その場で司法権をかざすことのできる銃=ドミネーター(相手に向けるだけで死刑判決が即時下ることもある)を持った刑事が凶悪犯罪や社会システムに立ち向かう話
キャッチーなキャラデザインからは一見想像できないほど重厚なテーマとスピード感のある展開を投げてくる、重たさと軽さの塩梅が絶妙。
『PSYCO-PASS』
『PSYCO-PASS2』
『PSYCO-PASS劇場版』
『PSYCO-PASS SS(短編劇場版三部作)』
や他にもノベライズ、コミカライズ、ゲームなどメディア展開多数
ナンバリング三部作になる今回は新しい試みが多く、主人公が男性二人(全作品までは女性が主人公)
1話1時間構成など、前作までを知っている人なら期待はもちろんだが大丈夫か?と不安が入り混じっていたことだろう。
現在で2話まで放映されているがはっきりと杞憂であったと断言できる。
1時間という長い尺だが、構成自体は今までのように複数話で一つの事件を終える。
これがこちらの視聴動機づけをしてくれる。
以前までは概ね3~4話で1事件を終えていく構成であった
1話 事件が発生、展開
2話 事件の手掛かりが見つかり、犯人に肉迫
3話 事件終息に向かって大立ち回り
そのため事件が終息に向けて加速していく2話目で話が次週に持ち越しになる。
リアルタイムで追っている人は煮え切らない気持ちで次週に持ち越される。
1話切りのリスクを考慮しなくていいのは今まで追いかけてきた人へのご褒美にさえ思える。
また1時間という尺に関しても見る疲れはまったく感じさせられないあたりは相変わらずのテンポの良さとキャラクターの会話の子気味良さに表れている。
この作品で特徴的なのは常に対比を用いてキャラクターを魅せてくる。演出的な要素が非常に多いが、世界観の説明でも舞台装置の役割を果たしている。
監視官は基本的に心のキレイな人物が犯罪者に共感をしないことで成立するポジションである=犯罪者の立場でものを考える能力に欠ける
一方の監視官は犯罪者に近い心理状態=犯罪者の考え方をリフレインできる
そのため執行官が説明をして監視官が更に深堀をするといったパターンが構築される。
そのためSF的近未来であるため都度舞台に説明や解説を挟む必要があるのだが、説明口調になっていても会話の上であるため違和感が生じない雰囲気が形成される。
(そして最終的にはドミネーターことカーナビの音声こと日髙のり子さんが機械音声で解説してくれる)
そして新キャラクターと新メンバーの顔触れ
前作までは執行官は潜在的犯罪者であるから危険だよと前髪の長いキャラがしつこいくらいにこちらに訴えかけてくるものの、悪質な執行官はついぞ現れない。
今作は打って変わって、主人公は新人男性監視官二名。
そして一新した監視官に対をなすかのように執行官お幅には配置変換。この執行官の内二名が癖が強い、初めから人種差別全開で足を引っ張りに来る。蓋を開けば悪人といったパターンはサイコパスではおなじみだが、単にいけ好かないといった理由で非常に人間臭いいじわるを行う新キャラクターには思わず引き込まれた。サイコパスの世界観だからこそ際立つもの感じられた。
潜在的犯罪者といえども刑事である執行官が救助対象難民にドミネーターを向けるシーンは好感度一瞬で墜落させてくる。そしてその対応にも緊張が走った。
また今作は前述した執行官と監視官の解説の役割も、監視官の一人がメンタリストであるため犯人の心理を真似て行動を振り返ることができる。傍から見ていると意味のわからない姿であるため執行官が質問を行う。といった具合で全く役割が逆転している。これも今後の話の展開として気になる見せ方だ。またもう片方の監視官は軍事訓練を受けた設定であり格闘術もバリバリ軍隊仕込み。殺陣も惚れてしまいそうなくらいかっこいい。執行官の立場がないくらいだった。(それでいいのか…)
格闘からはじまりパルクールまでアクションも相変わらずどころかパワーアップして帰ってきたことも嬉しい要素だった。
おそらく動きをつくるにあたり元にしている格闘技があるはずだが各作品ごとに使用している格闘技が明確に違うところも見どころだ。
話がとびにとんだがここまで次週が気になる作品は久しぶりだ。
常に意図的な対比を使う作品であるため過去作品を見ては新しい発見をしている毎日を送っている。
アマゾンプライムビデオで見返しながら毎週木曜日を楽しみに待つだけの生活にもなってしまっている。
うれしい悲鳴だがこのタイミングで独占配信はいやらしさすら感じる。
なにより一時間になったことで風呂敷の広げ方が尋常じゃない。
これが非常に困った。一話ずつの情報量が多すぎて3回くらい見返さないといけない。
端的に時間が足りない。
(そして視聴者の年齢が高くなってきたので少しだけ難しい話も…サブプライムローンが話の核で出てきたときにはニヤニヤとしてしまった…)
睡眠不足で犯罪係数が上がっているかもしれない…